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消防士の体力錬成と通常の筋トレは目的が違う
某ライザップの影響で最近、肉体改造などが流行ってますね。
私も週に一度はスポーツジムでトレーニングしておりますが、数年前と比べて明らかに多くの方がトレーニングをするようになりました。
さてタイトルの消防式トレーニングですが、はじめに一つ注意事項があります。
それは「手段と目的の違いをはっきりさせること」ことです。
当たり前のことですが、巷にあふれるトレーニング理論にはこの違いをはっきりさせているものは本当に少ないです。
例えば、あなたが野球をしているとして、身体作りで筋力トレーニングに励む。
その目的は「野球で強くなる」ことです。
その目的を達成するために、スポーツジムなどでトレーニングを行ったり、場合によっては解剖学や運動生理学まで学習したりするわけですが、間違いの多くはトレーニングの場面に置いて手段が目的化することで発生します。
強い野球選手を目指している人が、運動生理学を勉強することで学者になってしまうことはおそらくないでしょう。(まあ引退した後はあるかもしれませんが笑)
それは運動生理学の理論を野球の技術に活かそうとしているわけですから、手段の一つだという自覚は当然あるわけです。
しかし、トレーニング法はやっているうちに目的が変わったことに気づかない、あるいははじめから手段ということを忘れてしまっている人があまりにも多いです。
「あの人はものすごい筋肉だ」
「ベンチプレスで高重量を扱える」
これらは当然ないよりあったほうがよいでしょう。
特にトレーニングを始めた男性であれば、トレーニングにのめり込めばのめり込むほど強く憧れをもつことでしょう。(この本能みたいなものがあるから目的が手段化してしまうのかもしれません。)
しかしこのような要素も「野球で強くなる」という目的に結びつかなければ、何の意味も価値もありません。
野球に必要なトレーニングをすれば、目に見えて筋肉がつくことああるでしょう。
しかし、いくらトレーニングをしても、目立つような筋肉の発達がないこともあります。
ベンチプレス100kgが上がってしまうようになるかもしれないし、ならないかもしれません。
ここで大切なのはそんな時どう考えるかということです。
「腕や胸の筋肉がつかないのでバルプアップさせるために別の筋力トレーニングを加えてみる。」
これは手段が目的化した例です。
この問題は指導する側にも当てはまります。
「競技に必要な筋肉を考え、その筋力アップを量るメニューを決める」
この時点ですでに手段が目的化しています。
ターゲットとする筋力や筋肉量が増えれば、指導者の仕事は成功かもしれません。
しかし選手の立場からすれば、いくら筋肉が増えようと、競技で強くなってなければ何の意味もないのです。
もし競技に筋力トレーニングを活かそうと考えるのであれば、単純な筋肉の動きや量だけでなく、人間の複雑な神経系や骨格、個体差を考えに入れながら、指導をしていく必要があるはずです。
「あなたのトレーニングの目的は何ですか?」
ちなみに今の私はかっこいい身体を作ることです笑(今は消防職員ではありませんので・・・)
私自身の話になりますが、
大学を卒業し、1年間就職浪人をしながら、消防や警察の試験を受験しました。
その間に身体作りも必要だと考え、スポーツジムなどで筋力トレーニングに通いました。
また「消防は懸垂だ!」という漠然としたイメージがあったので、バイトしたお金で3万円くらいする懸垂代(ぶら下がり健康器の頑丈版)を購入し、自宅でもトレーニングに励んでいました。
その頃は週に2回はトレーニングに励み、きっちりと筋肉痛にして超回復させるぞと意気込んでました。
無事に消防に合格した私は、身体もしっかり作り込み、これなら消防でも通じるぜ!と意気揚々と消防の門を叩きました。
しかしそんな私の考えは消防の初任研修で淡くも崩れ去ったのです。
消防学校に入って気がつく現実
消防職員になると最初の半年間消防学校へ通うのですが、そこでの訓練で今まで鍛えていた方法のトレーニングでは全く通用しないことを体感します。
初任研修では週に5日月〜金曜日まで職員としての知識・教養・礼式・実務・現場での戦術・体力錬成などを徹底的に叩き込まれます。
というか正直肉体的にも精神的にもかなりきついです。
(その県やその時の担当教官によってかなり差はあるみたいですが)
自分もそれなりに体力を鍛えた上で消防の門を叩いたつもりでしたが、日々の訓練は相当きついものでした。
おかげで腰痛になってさらに苦労しました。
そもそも並のトレーニングをしただけで消防の訓練についてこれない
重くて暑い防火衣(約10kg)と10kg近くある空気呼吸器を背負って重いホースや資機材を持ちながら炎天下の中を毎日熱中症すれすれの状態で訓練したり、人を抱えて搬送したり、ロープを登ったり渡ったりと、とにかく過酷な状況下でも動き回る体力が求められました。
当時は本当に訓練の厳しさに悲鳴をあげておりましたが、考えてみれば訓練がきついのは当然のことで、命がかかる災害現場できついとか苦しいとか言っている場合ではないのです。
後から聞いた話ですが、消防学校の訓練では人間が普段本能的にブレーキをかけている脳のリミッターを少しでも解除できるように追い込むことを意識しいて訓練を組み立てているとのことだそうです。
まさに火事場の馬鹿力ですね。
まあそんなわけで今まで実施していたトレーニングはほぼ意味をなしませんでした。
自分が今までしてきたトレーニングは週に2回ほどウエイトトレーニングなどで筋肉を痛め、成長させていくトレーニング。
しかし消防で求められているのは、そういう体力だけでなく、それよりも農耕型で淡々と馬車馬のように動き続ける体力が求められていたのです。
今まで様々なトレーニング本を読み、実践してきた自分は
「もしかしたら、今までのトレーニングの常識は実際の現場では非常識ではないか?」と思いました。
それからはトレーニング方法を少し一新!!
自分で様々な工夫をしてトレーニングメニューを考えました。
小柄な私でも消防の訓練についていけるメニューを考えた。
自分は身長が161cmとかなり小柄でパワー不足を実感していたので、週に1度はこれまで通り、ウエイトトレーニングを実施して筋力と筋肉量の強化に努めました。
そしてできるだけ、疲労を溜めない形で自重トレーニングを数多くこなすようにしました。
主な自重トレーニングは懸垂と腕立て伏せですが、
とくかく回数を増やしても疲労がたまらないような努力をしました。
今まではしっかり筋肉に効かせることを意識してましたが、反動を使って全身を意識して使うようにしました。
懸垂はバネのように足と全身の反動をつけながら懸垂。
例えば
- 15分で150回懸垂をする!
- 連続で50回以上できるようにトレーニングする!(最高は46回どまりでしたが、、、)
- 腕立て伏せを1日1000回実施する。
- 50回腕立てしたら10回懸垂して1分休憩を1セットに5〜10セットトレーニングする
- ロープを自宅の2階からぶら下げ、登ったり降りたりなど
など
火災・災害現場に必要な体力を鍛える方法
フル装(防火衣と空気呼吸器)の状態で面体を装備して懸垂とハイクリーンを交互にサーキットトレーニングしております。
防火衣で約8kg、空気呼吸器で約12kgほどで合わせて約20kgあります。
海外だともっと装備は重いかもしれません。
加重懸垂10回から少しのインターバルを加えて限界まで懸垂
ダンベルを用いてスクワットとショルダープレスの組み合わせ
これも軽いインターバルを取り入れながら限界まで行う。
消防式サーキットトレーニングの効果は!?
- 消防で特に必要な「引き付ける筋肉」を懸垂で鍛える
- スクワットとショルダープレスで全身の連動と体力を鍛える。
- 消防服のフル装と面体をつけたことにより持久力を鍛えていく。
このトレーニングで火災現場で必要な筋力と体力が鍛えられます。
このトレーニングとてもキツイ!!
呼吸器の面体つけてるので、尋常ではないほど体力が奪われます。
消防士でない方でこれから消防士になりたい方は試しにマスクを濡らして装着するか、N95マスクをつけてトレーニングしてみてください。
N95マスク:通常のマスクよりウイルスぼ防護になります。消防では新型インフルエンザの時によく使われました。買うと高いです!!
かなり呼吸しづらいと思いますが、面体ありの状態はそれよりももっとずっと息が苦しいのです。
おそらく動画のトレーニングを終えたら酸欠になります。
ご家庭でこの訓練をする方法
- サウナスーツ
- リュックサックに2リットルのペットボトルは5〜10本詰める
- マスク着用
の状態でサーキットトレーニングを行えば少しは、消防のフル装備に近づけることはできます。
ただし、消防のフル装備のほうがずっと動きにくいです。
防火靴もかなり動きにくいですし、面体もそれなりに重量があり、吸うのに結構力を使います。また視界も悪いので結構ストレスになります。
ので実際はサウナスーツ着て重りをつけても動画の状態ほど強い負荷にはなりませんのでご注意ください。
まとめ
かなり強度の高いトレーニングになりますが、消防の火災現場に必要な理想の体力錬成と言えます。
消防士であれば、勤務時間の合間を縫ってこの体力錬成を取り入れてみてはいかがでしょうか?
またこれから消防士になりたい!という方はどれだけどんなトレーニングをしたらいいかわからないと思いますので、ぜひこのトレーニングで消防に必要な体力錬成に励んでくださいね〜!!
現役時代これに近いトレーニングはよく行っておりましたが、「もうこれはやりたくないな〜!」と思ってしまうほどキツイです!!
ポイントをまとめると
「高回数」「反動をつける」「インターバルを短めに」
など長時間に渡って高いパフォーマンスを維持できるように工夫しました。
あとは実際の防火衣や非番ではサウナスーツを着て走り込んだり、リュックサックに2リットルのペットボトルを10本詰め込んで、2時間以上歩きこんだり、近くのタイヤショップからいらないタイヤをもらって重りとロープをくくりつけ、ロープ引きのトレーンングを行ったりとまさに迷走試行錯誤を繰り返しましたが、できる限り消防の現場で役に立つような工夫をこらしながら体力錬成をしました。
そして疲労がたまりすぎてない限り、毎日何かしらのトレーニングをしました。
要するに消防士の普段の業務はあくまで業務であってトレーニングではないということです。
どういうことかというとトレーニング本に書いてある「超回復」とか無視していたということです。
土木業や鳶職など肉体労働をしている人に「超回復」という言葉がないように、消防職員やプロのアスリートにも「超回復」という言葉が必要ないのです。
その1から言っていることですが、競技や消防などで必要な肉体は単純な筋力をつけたり、筋肉をつけたいわけではないのです。
自らの目的にあったトレーニングは「神経系統」に力を出す方法をおぼえこますための作業であるのです。
もちろん疲労が溜まりますので、積極的に休ませる必要もありますが、極端な話、競技者や肉体労働者は日常生活と同じレベルでトレーニングをしていかなければならないということです。
土木業に従事している方が重い資材を1回2回運んだだけで筋肉痛になっている場合ではないですし、超回復しなければならないから1日仕事したからと言って超回復してないから次の日は働けないとか言っている場合ではないのです。
当たり前ですよね。
しかし慣れていくうちに余計な力は抜け、全身をうまく活用できるようになってきます。
初めは当然疲れると思いますが、しっかりと回数をこなしていくうちに身体は確実に適応していきます。
改めて自分が求めている理想を明確にして、その目標にあったトレーニングもとい日常生活に落とし込んでいきましょう!!